June 02, 2005

乙一 「小生物語」

 乙一さんのサイトに掲載されていた日記を本にしたもの。
 まえがきには「この本に時間とお金を割くのはやめたほうがいい」と公言。けれどそれがなかなかどうして、わたしはおもしろいと思った。
 一貫した自虐性、ソファーに座る少年。適当に書き散らした日記にしては物語性があり、ちゃんと読み物になっている。基本的によくいるであろうと思われる青年の生活パターンにはまっているところが共感を呼ぶ。

小生物語

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 30, 2005

乙一 「失はれる物語」

「Calling You」
「失はれる物語」
「傷」
「手を握る泥棒の物語」
「しあわせは小猫のかたち」
「マリアの指」の6作品を収録。

 最後の「マリアの指」を除き、角川スニーカー文庫から出ている「きみにしか聞こえない」「さみしさの周波数」「失踪HOLIDAY」からの再録。ライトノベルの形態で発表したものを、一般向けの単行本に作り直したものである。
 そのことについて作者は、読書体験においてライトノベルがある時期重要な位置を占めていた自分にとってこれはある種の敗北である、とあとがきの中で語っている。ライトノベルに踏み込むことなく通り過ぎてしまった私には(その頃は少女小説かヤングアダルトと呼ばれていたかな??)、単純に、格上げのように感じたのだが。
 というか、あとがきで笑わす乙一さんの作品にしては、この本のあとがきは大変まじめである。

失はれる物語

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 21, 2005

乙一 「ZOO」

「カザリとヨーコ」
「血液を探せ!」
「陽だまりの詩」
「SO-far そ・ふぁー」
「冷たい森の白い家」
「Closet」
「神の言葉」
「ZOO」
「SEVEN ROOMS」
「落ちる飛行機の中で」の短編10作を収録。

 孤独で、気持ち悪くて、切なくて。
 作者らしさたっぷりの一冊でおもしろかった。
 TVでいうと「世にも奇妙な」シリーズ、FMだと「ジェットストリーム」の昔原田宗典さんが書いていたこわい話シリーズ、阿刀田高さんの短編、そういったものが好きな人には最適でしょう。
 映画化されたようですが、見てません。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

December 16, 2004

乙一 「くつしたをかくせ!」

 羽住都さんの暖色を基調にしたイラストがきれい。
 乙一さんの作品はあとがきがいつもおもしろい。この作品では著者自身によるプロフィールが笑える。

 この季節にぴったりなクリスマス絵本。
 なんだけれど。
 絵本といえども、絵が美しければすべてOK、じゃあないでしょう。やっぱりもうちょっと内容が欲しいなぁ・・・と正直なところ思った。

くつしたをかくせ!
乙一文・羽住都絵・Aliy Lickfold訳

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 14, 2004

乙一 「GOTH」

「暗黒系」
「リストカット事件」
「犬」
「記憶」
「土」
「声」の連作短編6作を収録。

 リストカット事件、と副題がついているので、自傷行為を扱う精神的な話かなと思ったら、主人公ではなく他人が痛い話だった。最近、血の流れる小説を続けて読んでいるような気がする・・これからはしばらく違う雰囲気の本を読みたい。
 いずれも高校生の男女ふたりが主人公の作品。しかし、乙一さんの作品の主人公はどうしてこうも孤独なんだろう。だからこそ共感が持てる部分は大きいんだけど。
 そして、作品にときどき登場する意図的に読者の意表をつくどんでん返しはおもしろい。

GOTH
乙一著

| | Comments (0) | TrackBack (1)

September 30, 2004

乙一 「暗黒童話」

 こ、これは・・・しっかりホラーだった。
 個人的趣味として、心理的にこわいのは好きだ。けれど、スパッと体の一部を切断したり、変なものが変なところにくっついたり、ぐりぐりねじりとられたりするのは許容範囲を超える。
 えげつない系ホラーの秀作ならぬ習作といったところだろうか。
 
 けれどもこの作品のおもしろさは、猟奇的な描写のほかにある。事故で目と記憶をなくした少女が、移植した目の提供者である少年の記憶をたどりその実像を探ることによって、本来の自分自身を見出そうとするところである。

暗黒童話
乙一著

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 09, 2004

乙一 「平面いぬ。」

 乙一さんは、今年になって好きになった作家。「変な名前」と思ったのが興味を持ったきっかけ。『夏と花火と私の死体』『きみにしか聞こえない』と、今回読んだ『平面いぬ。』しかまだ読んでいない。

 「石の目」
 「はじめ」
 「BLUE」
 「平面いぬ。」の4作を収録。

 「石の目」は、こわい伝承民話がベースになっている。そういえば子どもの頃読んだ昔話の中にもこわいのがたくさんあったなー。アニメの「日本昔話」もこわいのやってたな。
 「はじめ」は、主人公の男の子が想像して作り上げた架空の女の子が実際に姿を現したことから、ストーリーが展開してゆく。
 「BLUE」は、トイストーリー。
 「平面いぬ。」は、刺青の犬。これが騒動の元を作ったりする。

 前編通じて楽しめた、というのが端的な感想。
 いつかどこかで読んだような、あるいはドラマで見たような、なつかしさをともなう作品ばかりだ。悪く言えばジャンル小説としてはありがちなストーリーなのかもしれない。
 が、この既視感の発するところは、少年期の空想遊びの中なのではないか。こんなことあったらこわいな、いいな、どうしよう。未来が無限であったころの想像力の中で経験してきたことを、作者はいまだ頭に残しているのではないか。
 だから、子どもの頃から理路整然とした思考傾向にあった人にはくだらないと思われる恐れがある。が空想癖のあった(ある)わたしは、正直じんときた。
 その他、作者の作品は眠っていた痛いところを掘り起こすもしくはつつく部分がある。ライトノベルの分野にも著書があるのは、青年期特有の痛みと残酷さを描写する部分に読者の共感を得るからではないか。

 というところで、わたしはすっかり乙一ファンになっている。

平面いぬ。(集英社文庫)
乙一著

| | Comments (0) | TrackBack (0)